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深谷正子「動体観察2Daysシリーズ」8月22日バージョン『自然は実に浅く埋葬する その2』

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深谷正子「動体観察2Daysシリーズ」8月22日バージョン『自然は実に浅く埋葬する その2』

8月22日(木)、ストライプハウスギャラリーでの深谷正子さんダンスソロ公演『自然は実に浅く埋葬する その2』。立ち会いの記録「見たこと、感じたこと、考えたこと」。

 

公演中に私の頭の中で浮かんだこと、振り返りからの再確認、公演前後の雰囲気や空気感なども含めながら書き殴った記録的な文章である。ライブ感をできるだけ残したいので、時間経過に重きをおいている。

 

公演から1ヶ月ほどが経過している。今回は公演後のホットな記録というよりも、わりとクールで熟成された内容になる気がする。

 

感動は時間とともに色褪せてしまう、という説がある。しかし、必ずしもそうではないだろう。余計なものが淘汰され、芯の部分が浮かび上がってくることもあるはず。今回はそんな期待を込めて、手を動かしていく。冷静に考えてみると、書くことも頭でっかちになることではなく、身体の発露ともいえそうだ。

 

書く時間がない、なんて言ってられない。

 

9月頭に深谷さん宅にお邪魔した。10月14日に深谷さんを迎えて行うワークショップイベント( https://www.facebook.com/events/1170914597329210 )関連で、お話をいろいろうかがった。書くことに対する深谷さんの想いも感じた。だからこそ書く。余計な色気を出さず、手を動かしていくのみ。

 

公演の画像が気になる方は、facebookで「自然は実に浅く埋葬する その2 動体観察 2daysシリーズ」あたりで検索してもらうと出てくるはず。インパクトがある画像が出てくるはず。

 

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いまは、9月21日。

 

今回は9月22日・23日公演の直前。あまり時間がない。一気に書き上げるのみ。一気書きで、大事なことを取りこぼすかもしれない。反対に思いがけない発想や言葉が降りてくるかもしれない。何かを世に出すことは、不安と期待が交差する。しかし、不安と期待なんてものは無用。丁寧に手を動かすだけでいい。

 

前回に続き、わかりにくい表現も多いけど、書くことに意義あり! そこには異議は認めない! しかし、文章の批判は大歓迎!

 

 



 

 

『終わりなき情熱』の余韻が続いたバースデー公演

まずは公演直後にfacebookにアップした内容を載せておく。

 

こちら。

 

 

念のために転載しておきます。

 

深谷正子さんの「動体観察2Daysシリーズ( https://www.facebook.com/events/1121900055776919/1121900069110251 )」8月版初日。

 

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今宵はバースデー公演。喜寿を迎えられた深谷さんは77歳。開演前から和やかなお祝いムード。公演時間は約65分。私的には、なによりもラスト5分の動きが心に響いた。『終わりそうで終わらない』という展開。「ここで終わりだよね」「ん? まだ続ける?」「今度こそ終わりかな」「いや、違うようだ。どこまでやるの?」。深谷さんの動き、玉内さんの照明、サエグサさんの音響が静かに絡み合いながら、消えそうで消えない時間が続いた。ラストは、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり……そして暗転。しかし、暗闇の中でも深谷さんの動く音が空間にしばらく響いていた。公演という性格上、終わるしかないのだが、まさに『終わりなき情熱』が続いていたと感じたし、もしかすると、自宅に戻られても深谷さんの中では今日の公演はまだ終わってないような気もする。

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「みなさんに祝ってもらって、もしかしたら、あと10年は(ダンスを)続けられるのではないか」。終演後、志賀信夫さんの音頭で乾杯。花束やプレゼントを贈られた深谷さんが口にした言葉が象徴的だった。自分に残された時間に対する不安が一気に吹き飛んだような印象。幸せに満ちていた。77歳で表現を追求し、自分を掘り下げようとする姿は美しかった。来場者が誕生会の場所に移動した後、スタッフの方々が自然体で片付けをやられていた姿も印象的だった。観客やスタッフの強力な後押しを得て、深谷さんの歩みは続いていく。

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公演内容については、私自身もどう解釈していいのか戸惑う場面もあったが、深谷さんの決意表明と受け取れば合点がいくような気もしている。詳細については、あらためて長文を書かせてもらいます!

最後に、深谷さん、お誕生日おめでとうございます!

 

『終わりなき情熱』と書いたが、今回はこれに尽きる。

 

きっと、公演後も深谷さんの『終わりなき情熱』は続いている。深谷さんの魅力は、日常から情熱を絶やさずに「動体」しているところなのではないだろうか。

 

 

今回は2部構成に感じた……その理由とは?

振り返りのメモを見直して書く前に、あらためて公演の記憶を反芻してみた。

 

結論から書く。今回の公演は、いつもとは違うタイプに感じられた。形式的には2部構成のような印象

 

なぜ2部構成に感じたのだろうか?

 

明らかに前半……ざっくりと分けると「前半2/3」と「後半の1/3」は異質なものに感じられた。

 

なぜだろう?

 

メモを見直し、振り返りながら、そのカギを見つけ出してみたい。

 

また、公演直後に “ どう解釈していいのか戸惑う場面 ” というのは、自分なりに消化できた。

 

ということで、今回の公演について。

 

 

 

深谷正子さん「動体観察2Daysシリーズ・8月22日バージョン」の深堀り

ここからが本番。「動体観察2Daysシリーズ・7月22日バージョン」深谷正子ダンスソロ『自然は実に浅く埋葬する その2』公演。

 

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会場はストライプハウスギャラリー・スペースD。2024年5月にスタートし、12月まで続く「動体観察2Daysシリーズ」の4回目(8月公演)。

 

まず、タイトルが気になった。

 

『自然は実に浅く埋葬する その2』・・・「自然は実に浅く埋葬する 」とは?

 

人間の場合は墓のような形で封印されるが、自然界での死はそのようなものではない。亡くなった動物や虫、植物などはそのまま土へと還っていく。自然界では生死が露出している。

深谷さんはバースデー公演で、生死を演じようとしているのか? いや、過去を葬って決別し、未来を生きる意思表明をするのか?

 

そんなことを考えて会場に入る。

 

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階段を登り、フロアに入る。無造作に放置された枯れた向日葵が目に飛び込んでくる。異常な本数。空間手前と右側は客席で、対する空間奥と左側壁面に黒ずんだ向日葵が立てかけられている。大小合わせて、約80本。薄汚れたフロアには枯れた葉や種も落ちている。ステージのやや中央部分には、大型の植木鉢カバーのような透明のプラスチック物体が重ねられた状態でポツンと置かれている。照明はステージを囲むように6灯。

 

大量の枯れた向日葵は水分を失い、かろうじて向日葵の形状は保っているが、もはや細胞内部の水分は失われ、回復不能状態。雑菌の増殖のせいなのか、独特の臭いが空間に充満している。これを死臭と感じるか、完全に朽ちきるまでの存在証明と受け取るかで、公演の印象も変わってくるだろう。

 

深谷さんは大量な枯れた向日葵をどのように料理するのか? 私の興味ポイントは、その一点にフォーカスされた。

 

ここまで読まれた方は、開演前から空間は異様な雰囲気に包まれていたと感じるかもしれない。しかし、実際は真逆だった。照明は明るいまま。バースデー公演ということもあり、そこかしこで談笑の声。開演30分ほど前からは、来場者にコーヒーがふるまわれた。ジャズがBGMで流され、和やかなレイドバック気分。すぐ傍らに大量の枯れた向日葵が置かれているのに、不快感のカケラもない。

 

 

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19時15分。開演時間となり、唐突な暗転。穏やかだった空気が一気に変わる。

 

薄明かりの中で白い衣装で入場する深谷さん。その足取りは、とても普通。スタスタという擬態語がピッタリなノーマルな歩調。上手側で立ち止まり、しばし静止。そしてステージをスタスタと半周して、また立ち止まる。照明は薄明かり。白い衣装がぼんやりと残像を残しながら空間を移動している印象。

 

2分ほどが過ぎ、やや強めの照明が当てられ、白い空気のような存在だった深谷さんの姿がくっきりと浮かび上がる。ズイッと前へ出る。そして上手へ移動。照明の明るさで際立つ表情。何かを感じている様子。視線はまわりを見渡しているが、モノを目で見ているというよりも、見えていない何かを探るような心眼のような視線。

 

この時点で、向日葵に照明はハッキリとは当てられていない。

 

何かの存在を受信(感知?)するように右手を動かす。これは視線の先にある何かを確かめるためなのだろうか。さらに、身構え、後退りし、身体をくねらせていく。

 

徐々にセンターに移動し、今度は遥か先へと視線を向ける。視線の先にあるのは、深谷さん自身の過去なのか、それとも未来なのだろうか。

 

何かを感じようとしているのか? 気配に反応しているのか? それとも明確に気づいたことがあるのか?

 

7分が過ぎ、ようやく明るさを増す照明。明るくなったことで向日葵と深谷さんの関係性が明確となる。しかし、深谷さんは両手を後ろに組み、なにかを感じているような素振りを続ける。

 

この時点で、私は「じつは、深谷さんには向日葵は見えていないんだな」と感じた。

 

いや、正確には「向日葵という存在自体ではなく、向日葵の内側にある見えない何かを見出そうとしている」と感じた。深谷さんは丁寧に、顕微鏡的なミクロな視点で、細胞的なレベルでモノを見ようとしているように感じられていった。

 

観客がどのように舞台を見ようと勝手なことではあるが、この時点で、私は「枯れた向日葵」を「生死の象徴」的な発想で見ようとしていたことを恥じていた。とくに私の場合は展開を予想してしまう傾向が強い。当たり前のことだが、「演じ手が何を伝えようとしているのか?」を感じようとする方が面白い。

 

 

◯絶妙なタイミングでの音響フェードイン

「深谷さんには向日葵は見えていないんだな」と感じたタイミング、10分すぎあたりにサエグサユキオさんの音響がフェードインしてくる。

 

機械音のようなサウンドは、時計の早回しのようにも感じられた。頭の中では時計の針がグルグルと回っている。深谷さんの耳にはどのように響いていたのだろうか。3分ほど続いた機械音の中で動きが変わる。まるで向日葵とは違う別の気配を感じるような動きへと転じていく。

 

機械音がカットアウト。身を壁へ委ねつつ、しばし棒立ち気味となった深谷さん。

 

このあたりの音響の手腕は見事というしかないだろう。そして、音に対して脊髄反射のように瞬間反応する深谷さんも流石だ。

 

この後に、かすかに飛行機のような音が流れたような気もしたが、それは私の空耳だったのか? サエグサさんが音を入れようとしたが思い留まって消してしまったのか?

 

 

◯いったい向日葵は何の象徴だったのか?

開始から15分ほどが経過。ここから一気に動きが激しくなっていく。

 

突然、前へ出る。舞台をグルグルと回る。左右へと動き、向日葵の前で立ち止まる。

 

そして向日葵を両手でグイッと鷲掴みして中央へ投げ捨てる。上手から投げ捨て、下手へ移動して投げ捨て、さらにもう一度下手から、むんずと掴んで勢いよく投げる。そして上手へ行き投げ捨て、下手に向かい無造作に投げ捨てる。その行為を何度も何度も繰り返す。カミシモの向日葵がなくなってきたところで、中央奥の向日葵へ移動して投げ捨てる。ほんの5分程度の間に、移動して投げ捨てた回数は20回ほど。壁に立てかけられた80本ほどの枯れた向日葵のほとんどは、舞台の中央に山のように積み重ねられている。

 

 

投げ捨てられた向日葵は何の象徴だったのだろうか。。。

 

 

私には、深谷さんが積み重ねてきた『公演の象徴』に感じられた。

 

カミシモを移動する様子は、東奔西走して公演を続けてきた姿にだぶって見えた。

 

半世紀もの間、ソロやカンパニーで表現活動を続けてきた深谷さん。自分のやってきた軌跡を噛み締めながらの行為だったと感じたいのは、見る側としては感情移入しすぎかもしれないが……。

 

20分が経過し、壁に残された向日葵は10本程度。うまく表現しにくい機械音が一瞬だけ流れる。音に感応するように手を止める。何かに気づいたのだろうか、徐々に身体を丸め、手を震わせる。身体が小刻みに震えている。

 

積み重ねられた向日葵(公演)の山。そして残り僅かの向日葵。

 

深谷さんに胸にはどのような思いが去来していたのだろう。私には過去の自身のやってきたことが脳裏に走馬灯のように浮かんでいるように見えた。

 

 

◯植木鉢カバーの意味するものは?

表現しにくい機械音が再び流れる。ここで震えは止まる。ゆっくり立ち上がり、まわりを見渡す。いったい何を見ているのか? 私には何かを探しているように見えた。

 

少し、ため息をつき、前へ出る。プラスチックの植木鉢カバーを手に取り、一枚一枚、塊から剥がして向日葵の山のまわりに点在させていく。ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと舞台全体に置かれていく植木鉢カバー。その数は37個。植木鉢カバーの意味するものは、いったいなんだろうか。

 

 

・ ・ ・

 

 

開始から30分ほどが経過し、舞台の状況は一変していた。

 

壁に立てかけられた80本ほどの枯れた向日葵は、舞台中央に山積みされている。向日葵の山を取り囲むように置かれた謎の植木鉢カバー。その中央で深谷さんが立ちすくんでいる。いや、立ちすくむというよりも、仁王立ちともいえるか。そこには「恐れ」と「恐れを跳ね返そうとする強い意志」がないまぜになっているようにも見えた。

 

そして、白い衣装を力強く引っ張る。身体がこわばる。「恐れを跳ね返そうとする強い意志」が優勢となった印象。

 

このタイミングで、一瞬、深い低音が流れる。すると深谷さんは向日葵の山を足で押し動かそうとする動きに転じる。右足、左足に力を込めて押す。足だけで押して動かそうとする。手は使わない。手は足のサポートのような形。太腿の裏に添えられている。

 

続いて反対側(奥側)に回り込み、同じように足で押す。そして衣装に手をかける。右手で引っ張り、左手で引っ張る。気持ちを振り絞るように向日葵の山を押す。ここで背後からの照明が輝く。バックライトで浮かび上がる深谷さんが美しい。

 

5分ほどが過ぎ、向日葵の山を足で押し動かす行為が止まる。そして、身をかがめ、向日葵の山に突っ伏す。

 

向日葵の山の中に右手を伸ばす。左手は衣装を引っ張る。向日葵の中から何かを探している様子。まるで向日葵の中に残っている生命の欠片を探しているようにも見える。

 

次第に表情は柔らかく、何かをやり遂げたような雰囲気へと変わっていく。照明はアンダー気味になり、抽象的な音が流れる。

 

 

・ ・ ・

 

 

すると深谷さんは向日葵の山から一本を抜き取り、ひとつの植木鉢カバーにタネを落としていく。先程までのやりとげた表情は消え、険しい顔つきでタネを落とし続ける。さらに新たに一本の向日葵を抜き出しタネ部分を崩し、植木鉢カバーにタネが入れられていく。丁寧に、激しく、決して無造作ではなく、向日葵を崩し、タネを抽出していく。

 

先に【向日葵は深谷さんが積み重ねてきた『公演の象徴』に感じられた】と書いたが、ここで確信した。

 

やはり向日葵は『公演の象徴』であり、植木鉢カバーは『未来』であり、タネは『未来を担う後継者』という意味合いがあったのではないだろうか。

 

 

・ ・ ・

 

 

冒頭で2部構成に感じられたと書いたが、このあたりまでが1部。深谷さん自身とまわりの状況の総括といった印象を受けた。

 

深谷さんの舞台を見ている回数は少ないので断言はできないが、「少しセンチメンタル的な部分が強かったかな?」なんてことも感じた。他の人はどのように感じただろうか。もしかするとセンチメンタル的と感じたのは私だけかもしれない。

 

見る側は勝手である。勝手に深谷さんは強い存在あってほしいと願っている部分がある。

 

 

◯センチメンタルからの前半から、後半へ

植木鉢カバーにタネを入れた後、空気が変わっていった。

 

足を交互に擦りつけていく。そして正座。正面を向き、目を閉じる。瞳を閉じたまま、右手を喉にやり、衣装を引き伸ばす。正座のまま身体を前へ倒し、そして起こす。衣装に手をかけたまま身体を揺り動かす。前へ倒しては戻し、戻しては前へ倒す。身体をくねらせ、ねじらせ、揺らしていく。この動きに同調しつつ照明も徐々に暗くなる。

 

ここで抽象的な音がカットイン。メモには3種類の音が流されたと記されている。順番に3種類が流されたのか、3種類の音が重ねられていったのかの記憶は、ない。ひとつだけ言えることは、この音が2部構成の後半の開始を告げるものだった、ということである。

 

いつも感心させられる。照明と音響の絶妙な後押しに。

 

 

◯全開となった『終わりなき情熱』

スタートから50分ほどが過ぎ、抽象的な音がカットインがされた後からの展開が凄かった。

 

薄暗いところで何かをやっている深谷さん。最初は何をしているかわからなかった。目を凝らしてみると、どうやら眉墨で顔に何かを書いている。続いて口紅を取り出し、顔に、頬に塗りつけていく。真っ赤となる右頬。そして今度は左頬。グルグルと紅が塗られていく。さらに手にも、指にも、右の掌にも左の掌にも塗りつけられていく。真っ赤となる掌。その掌を顎へ、胸へと伸ばす。身体中に赤色が広がっていく。

 

ほんの5分程度に時間だったが、状況は一変した。

 

冒頭で公演直後に “ どう解釈していいのか戸惑う場面 ” と書いたが、それはこの場面のことである。

 

最初は『童心に戻るような純粋さを出す表現』とも思ったが、あらためて振り返ると『これからは、なりふりかまわずやっていく!』という意思表示だったに違いない。

 

 

・ ・ ・

 

 

ここまでで55分が経過。

 

ゆらめく身体。徐々に動きは大きくなっていき、向日葵の山に身を預ける。両手を大きく広げ、続いて足も大きく広げていく。身体を微動させ、まるで向日葵と一体化する姿が照明によって鮮やかに浮き彫りにされていく。

 

「これで照明がフェードアウトして終了となるかな?」と思ったが、ここからが真骨頂だった。

 

向日葵の山のから起き上がろうとする。両手をゆっくりと広げる。右手を天に伸ばすようにかかげ、続いて左足を伸ばしていく。ここで金属系の抽象的な音がフェードイン。身体を持ち上げようとするが、脱力。徐々に照明も落ちていく。今度こそ終わりかと思いきや、終わらない。両足を伸ばして、また脱力。さらに照明が暗くなり、音も小さくなっていく。

 

一瞬だけ金属系の音が大きくなるが、照明はさらに暗くなっていく。ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと。そして暗転。追いかけるように音もフェードアウトする。

 

 

しかし、まだ終わらない。

 

 

開始から65分。暗闇の中で響く深谷さんの動く音。向日葵の上で動くザワザワとした音がしばらく続く。そして終了。

 

公演後の感想でも書いたとおり、私には深谷さんの『終わりなき情熱』が胸に響いた。

 

 

◯公演終了後の様子

「今日は私の生まれた日です。77歳になりまして……」。少し照れくさそうに話し出す深谷さん。

 

2023年後半からスタートさせた「七針」での公演、コロナで寝たきりになったこと、そして誕生日を無事に迎えてバースデー公演を多くの人たちに見てもらえる感謝の言葉などの後、志賀信夫さんの音頭で乾杯。花束やプレゼントを贈られた深谷さんが口にした言葉が象徴的だった。

 

「みなさんに祝ってもらって、もしかしたら、あと10年は(ダンスを)続けられるのではないか」

 

そして、私は思った。

 

「深谷さんの情熱をまだまだ見続けたいし、伝えていきたい」と。

 

 

・ ・ ・

 

 

ここまで書いて、やっと当日パンフに目を通す。

 

公演感想の補助線として3点ほど抜粋しておく。

 

まずは1点目。タイトルに関して。今回のタイトルは『自然は実に浅く埋葬する その2』。これは2014年5月9日から13日に行われた《ダンスエスキース 自然は実に浅く埋葬する 拳を突き出すためのダンスリレー5日間》に続くもの。今回、深谷さんの奥底からこのタイトルの言葉が蘇ってきたから使ったそうだ。きっと《その1》はターニングポイントとなった公演だったのだろう。

 

2点目。「老い」について語られているくだりが印象的だった。自らを「死のグレーゾーン」に入り込んでいると位置づけ、だからこそ「せめて老いて行くリアルさや、ぶざまさを表出させたいと、真に思う」と記されていた。なるほど。やはりか。後半ハイライトの眉墨や口紅は、まさにぶざまでもやっていく、を伝えたかったのだろう。

 

ラスト3点目。おびただしい向日葵の意味について。「先日の初め玉内から、来月は“ひまわり”をつかわない?という問いかけがあった」と記されている。向日葵は深谷さんが積極的に望んだわけではないようだ、では、植木鉢カバーはセレクトは誰がしたのだろう。やはり深谷さんなのか、それとも玉内さんか。

 

 

感想を書き終えて、そして10月ワークショプ

今回は一気書きだった。しかも公演から1ヶ月が経っている。しかし、諦めずここまで辿り着いてホッとしている。

 

深谷さんのご自宅で話をうかがったときに印象に残った言葉をひとつ。

 

それは、「(深谷さんが多作である理由は)やってないと発見できないから」というもの。

 

書くことで発見できることがある。そして、書くことが現場に立ち会えなかった人たちに伝えることで発見の糸口(触媒?)になると信じたい。

 

ここからは宣伝。

 

この流れから10月14日(月・祝)には、現代美術家・坂田純氏の作品を迎え、西荻窪「井荻会館」で美術と即興のワークショップイベント( https://www.facebook.com/events/1170914597329210 )を開催する。

 

ぜひ立ち会っていただきたい。

 

以上!

 

(注)記事内で記載した公演の時間経過と内容は目安です。おおよその流れです。メモが間違っている部分、読み間違いしている部分があるかもしれません。どうぞご理解ください。

 

 

深谷正子ダンスソロ『庭で穴を掘る』
動体観察2Daysシリーズ・8月22日バージョン

日時:2024年8月22日(木)・19:15開演
会場::六本木ストライプハウスギャラリー・スペースD
出演:深谷正子
照明:玉内公一
音響:サエグサユキオ
舞台監督:津田犬太郎
協力:玉内集子・曽我類子・友井川由衣

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