「銀座 K’sギャラリー」にて中堅男性作家6人展が開催中です。会期は8月07日(月)~8月12日(土)です。
目次
展示内容について
まずはタイトル「うつせみのそら」について。
『うつせみ』の漢字は「空蟬」。見てのとおり、中が空っぽになった蝉(蝉の抜け殻)のことです。俳句では夏の季語で、はかなさを感じさせる言葉として使われます。
しかし、『うつせみ』自体は日本最古の和歌集『万葉集』にはすでに使われており、「この世(現世、死者に対する生きている人)」などの意味で使われたのが最初です。
「うつせみのそら」は、生きているこの世界で輝く人々という意味を込め、『うつせみ』に『そら』を付けたものだそうです。
『そら』には、いろいろな意味合いがありますが、高く舞い上がるような可能性や希望が込められいると感じとってもらうのがニュアンス的には近いと思われます。
・ ・ ・
「うつせみのそら」は、今回で8回目となります。スタート時には30代40代の若手男性作家展でしたが、現在は中堅男性作家展となりました。
タイトルのとおり、それぞれが高みの世界へステップアップされているのを感じさせられる展示になっています。
後半にいくつか写真を載せておきますが、大部屋には大作が自然体で飾られ、小部屋には小品が小気味よく並んでいました。いい意味で余白のある空間になっているので、見る側も余裕を持って作品を楽しむことができます。
近く見る、遠くから見る、斜めから見るなど、作品と自分との距離感も含めて楽しめますので、視点による発見が楽しめます。それだけ各自の作品には深みがあるということでしょう。
展示詳細
『うつせみのそら』
会期:2023年08月07日(月)~08月12日(土)
時間:月〜木 12:00〜19:00/金 12:00〜20:00/土 11:30〜17:00
休み:なし
ギャラリー紹介:http://ks-g.main.jp/exhibition/20230807/index.shtml
facebookイベントページ:https://www.facebook.com/events/809742310852835
参加作家
・新埜 康平(平面)
・安藤 開(立体)
・石黒 元嗣(平面)
・笠原 宏隆(平面)
・関 仁慈(平面)
・相馬 博(平面)
会場:銀座 K’sギャラリー& K’sギャラリーan
住所: 東京都中央区銀座1-13-4 大和銀座一ビル6F
電話:03-5159-0809
アクセス:東京メトロ「銀座一丁目駅」「京橋駅」「銀座駅」より数分
ホームページ:http://ks-g.main.jp/
マップ:
↑別画面で開くと拡大されます。
https://ks-g.main.jp/information.html
展示の様子
簡単に展示の様子を紹介します。メインの大部屋の展示を中心に紹介します。
こちらが全景です。
では、それぞれの作家さんの作品について。
安藤 開さんの格子状の焼き物は、形の骨格のようにも見えます。骨格から浮かび上がる表面の形状、内側に確かに存在する見えない形状、そして光との関係で生み出される影の組み合わせが見るものの想像力をかき立ててくれます。
関 仁慈さんの作品は、ギャラリーの壁面から一定の距離をとったアクリル板の支持体の上でボントとアクリルシリコンが躍動しています。実際に見る位置や角度を変えることでアクリル板と壁面の間に生まれる幾重もの濃淡のある影が生まれ、さらに作品本体と影をシンクロさせて見ることで、まるで生命が宿っているような不思議な感覚におちいります。
新埜 康平さんは新しい感覚の日本画といえます。和紙に銀箔をふんだんに使い、その上には不思議な文字のような形が整然と並んでいます。見る人によって英単語の変形にも見えるでしょう。この文字についての詳細はわかりませんが、今風に言ってしまうと「AI文字」と受け止める人もいるかもしれませんね。個人的にはマイク・オールドフィールドの『チューブラー・ベルズ』(←クリックすると、アマゾンのページに飛びます)ジャケットを思い出させるものでした。
笠原 宏隆さんの作品を見ると、ロールシャッハ・テストを思い出す人も多いでしょう。しかし笠原さんの作品は非常に手間がかかる作業に積み重ねでで作品を完成させています。画面の片側にだけ水性ペンキを垂らし、折り曲げ、もう片方の画面へ転写させる技法です。作業の途中で水性ペンキが変に流れてしまわないように、細心の注意で転写は繰り返されています。この作品を笠原さんが手掛けるようになってからどのくらいになるでしょうか。多分、4〜5年前だったと思いますが、池袋の個展でシリコン作品から大胆に方向転換されたことに驚かされたことを覚えています。当時はダークで、巨大で、力技の凄さに圧倒されました。しかし、今回は非常に明るい色彩で、軽やかさが感じられました。何層ものレイヤーとして転写された透明度のある繊細な色の重なりからは、作業のストイックさも伝わってきます。
(
石黒 元嗣さんは深いブルーが印象的です。この油彩で丁寧に描かれたブルーは、侮れない何かを隠し持ったブルーで、ジーッと見ていると、何かが「いる」ことに気付かされるはずです。いや、少なくとも私には「いる」ように感じられました。多分、今回の展示作品の中で、もっともあらゆる角度から見たと思います。
ラストは相馬 博さん。今年の相馬さんは精力的です。2023年は吉祥寺美術館のロングラン個展(1月14日〜3月5日 )からスタートし、その後は瑞穂町郷土資料館で1ヶ月の展示(6月3日~7月2日)を経て、現在は茨城県日立市「詩穂音」での梅花美月さんとの二人展(8月1日~8月29日)のダブルでの展示です。かなりハードな状況にもかかわらず、展示の度に新作に挑戦しているところが相馬さんの凄いところです。今回も小品で新しいことを模索をされていました。明らかにいままでとは雰囲気が異なっており、「もしかして変化の兆しなのかも?」と感じさせられました。
こちらは大部屋の大作。
こちらが小部屋の「変化の兆し」を感じさせる作品たち。
今回の記事に掲載している写真は搬入時に撮影したものです。この時点で相馬さんの作品2点が展示されませんでした。理由は表面に擦れが多少あったからです。しかし、すぐにニスを直して初日には追加されたようです。それがこちらです。大型作品のミニミニ版といった感じです。写真を送っていただいた相馬さん、サンキュです!
(写真提供/相馬博)
参加作家 プロフィール
<新埜康平 Arano Kohei>
東京生まれ。
東京を拠点に活動し、展覧会などを中心に参加している。
ストリートカルチャーや映画の影響を受け、
仮名の人物や情景、日々の生活に根差した等身大のイメージをモチーフに制作。
余白やタギング(文字)の画面構成等、様々な絵画的要素を取り入れ、
日本画×ストリートをテーマに制作。
第1回 Idemitsu Art Award(旧シェル美術賞) 入選。
第39回 上野の森美術館大賞展 入選。
第56回 神奈川県美術展 入選。
<安藤 開 Ando Kai>
2015 多摩美術大学大学院美術研究科博士前期課程工芸専攻陶研究領域 修了
やきものという素材や行為を通して、
かたち在るものと無いものの心地よい関係性を模索している。
関係性を見つめるというものの見方に、様々な物事への応えがあると感じる。
<石黒元嗣 Ishiguro Mototsugu>
1972 名古屋市生まれ
1996 東京藝術大学大 美術学部絵画科 油画専攻 卒業
1998 東京藝術大学大学院 美術研究科 油画技法・材料研究室 修士課程 修了
2022 喫茶芸術領域構築展04 (個展) SUTTENDO COFFEE:上尾
2015,2019 (個展) ギャラリー ぺピン:東浦和
2005,2007~2022 (個展) ギャラリーGK:銀座
空気または水などの動きや流れ、なにかしらの気配など、
目には捉え難い感覚の断片をキャンバスの上に定着させたい。
<笠原宏隆 Kasahara Hirotaka>
1977年 埼玉県生まれ
2001年 東京芸術大学絵画科日本画専攻卒業
人は色や形から様々なイマージュを受けとる。
私は、その更に奥にあるイマージュを超えた領域へと辿り着きたい。
<関 仁慈 Seki Hitoshi>
1976年 茨城県生まれ
“シンプルなものの中にこそ、本質的な奥深さがある”
というテーマのもと、うっすらとそこにあるもののエネルギー、
形になる前の無垢なそのものを追い求めている。
2022 《DAYDREAM/白昼夢》 Galerie Grand E’terna(Paris)
『不文律』 ギャルリー東京ユマニテbis(東京)
2021 美の精鋭たち -2020+1- 川口市立アートギャラリー・アトリア(埼玉)
2021~’16 うつせみのそら K’s Gallery(東京)
2017 世代を超えて2人展[野澤義宣・関仁慈] K’s Gallery(東京)
その他多数
<相馬博 Soma Hiroshi>
1972年東京生まれ
中央美術学園造形芸術学部卒業、同研究コース修了、京都芸術大学芸術学部卒業
代表的な個展に2023年武蔵野市立吉祥寺美術館
東京に生まれた私にとって、身近な自然風景は空やその向こうに広がる宇宙でした。
それらに東洋美術の中にある小宇宙の美を絵画の中で再現しながら、目に映るものがはたして真実か、当然のように思っている視覚と知覚、そして美の本質を問いかける作品を制作しています。
以上
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