『ハート・トゥ・アート』の考えていること

表現者の共鳴、エネルギーをさらに増幅させることで……

 公の場で、具体的なことを言ったりすることはほとんどありませんが、『ハート〜』には目標があります。第5回の終了時点では、まだまだ3割程度しか実現していないのが現実です。しかし、ここまでの間に大きな経験や実績を積んできたことは事実です。これを土台にして、2003年からは本格的に第2ステージを意識した展開を進めていきたいと思っています。

 その第一歩として、通常の『ハート〜』とは別に、新しい表現の場を設けることにしました。ひとことで言えば、「作家さんのパワーを増幅させて共鳴し合う場を作り、それでお金が稼ぐことができたらいいよね」というものです。具体的には以下のような3つのポイントがあります。

 ひとつは「表現者たちが刺激(共鳴)し合いながら、ひとつの世界を創りあげること」。一般的に展覧会といっても単純に作品を展示することだけで終わってしまっているのが現実ではないでしょうか? もちろんその現状を否定しているわけではありません。共同作業というのは口で言うほど簡単ではないことは知っています。しかし、作家さん同士が自分を主張し、譲歩し、刺激し合うことがあったからこそ生まれる作品(世界)もあるのではないでしょうか。そんな世界を実現させることを、ひとつの目標にしています。2002年の12月に「東麻布でギャラリーさんとの合同企画展」を行いました。その中でミュージシャン、舞踏家、服飾作家のコラボレーションなどを行ったのですが、その緊張感のあるパフォーマンスは非常に刺激的でした。そういった表現者同士の馴れ合いではない、真剣勝負の場として機能させていきたいです。

 つぎの目標は「商売として成立すること」。『ハート〜』もそうですが、展覧会は一般的に入場無料のケースが多いと思われます。ギャラリー料をはじめ、作家さんたちは高いお金を払って、自分の作品を観てもらっているわけです。当然のことながら赤字。この現実に一石投じる場として『ハート〜』はあるといってもいいのですが(安い参加費のグループ展みたいなものですから……)、やはり実行委員会側が持ち出しているのが現実です。音楽でも芝居でも「対観客」というものを意識してチケットを売ったりしていますが、その点で比較するとアートの分野は立ち後れているように思われます。その部分を作家さんたち(表現者の方たち)の力を借りながら打破していきたいと思っています。決して観客に媚びることなく、自分たちが精一杯の表現をすることで商売が成立する場にしていきたいのです。

 最後のポイントは「遺伝子継承&異文化交流」。どうしても若い作家さんが中心のイベントにはなるでしょう。しかし、年配の実力者や今まで交流のなかった表現者にも参加してもらうように努め、より緊張感のあるイベントにしていきたいと思っています。長年培われてきた年配の実力者の思い、まったく違うジャンルの表現者の思考などと触れ合うことが参加者の刺激や財産になることを望んでいます。例えば、年配者と若者が共同作業で何かを作ることができたら、必ずいい経験として残っていくはずです。また、特別の空間の中で作家がデザインした衣装を着たミュージシャンが、その作家さんのために作った曲を演奏する、などといったことも考えられます。普段の生活ではまったく接点のなかったもの同士が、このイベントを通じて結びつくことで何かが広がっていくのではないでしょうか。

 このイベント名は“『ハート・トゥ・アート』 エコーズ(echords)”と名づけたいと思います。エコーズとは「echo(共鳴)」と「chord(心の琴線・和音)」を組み合わせた造語の複数形。表現者たちが心をぶつけ合わせながら新しい何かを創りあげ、それが共鳴しながら広がっていって欲しい、という願いからつけました。
 最初にも書きましたが、定期的に開催されている高円寺での『ハート〜』は継続していきます。これに「エコーズ」、さらに2002年の10月に開催した過去の参加者メインのイベント「アート・カーニバル」を加えた3本柱で活動を進めていきたいと思っています。
(文責/わたなべひろし/2003.1.20)


トップに戻る

問い合わせ