『ハート・トゥ・アート』渡辺(@heart__to__art)です。新形コロナ感染で休館となっていた「川崎市岡本太郎美術館」が6月2日より再開されました。4月25日からスタート予定だったF・バシェ生誕100年 日本万国博覧会から50年「音と造形のレゾナンス – バシェ音響彫刻と岡本太郎の共振 – 」もようやくスタートです。
バシェの作り上げた「音響彫刻」5基が一堂に会する貴重な機会です。期間は7月12日まで。まだ一ヶ月ありますね。表現の革新を目論んだバシェの「音響彫刻」と呼ばれる作品を体感しに行ってみてください。
目次
川崎市岡本太郎美術館主催では2回目! 「バシェ音響彫刻」はスゴイんです
岡本太郎美術館で待ちに待った「バシェ音響彫刻」の展示がスタートしました。
タイトルは、F・バシェ生誕100年 日本万国博覧会から50年「音と造形のレゾナンス – バシェ音響彫刻と岡本太郎の共振 – 」。
ちょっとタイトルが長いです。
しかし、最低限の要素を盛り込んでもこうなっちゃいますよね。
岡本太郎美術館にとっても、日本にとっても、意義深い展示ですから。
その理由は……
岡本太郎「太陽の塔」とバシェの「音響彫刻」は、1970年に『人類の進歩と調和』をテーマに行われた日本万国博覧会のシンボリックな存在だったからです。
まさに芸術ファンにとっては、2大スター共演といったところです。
三波春夫と美空ひばりが並んで登場するような感じでしょうか。
・・・せっかくの品格を汚してしまいそうな例えでしたね。。。その辺の話は後回し。
まずは今回の展示内容をご紹介します。
展示される「音響彫刻」は全5基! 個性的な造形が圧巻
2018年に引き続き、2度めの展示となる今回は、大阪万博から2基、京都市立芸大から2基、東京藝大から1基、合計5基の音響彫刻が集結します。
それぞれに個性的な造形で、初めて観る人にとっては「えっ? これは金属オブジェ? 楽器なの? 音響彫刻? なにそれ???」という印象を受けるはずです。
それぞれに<高木フォーン><川上フォーン><桂フォーン><渡辺フォーン><勝原フォーン>という日本人の苗字が付けられているのも面白いです。
理由は、大阪万博のためにバシェは日本に4ヶ月ほど滞在して全17基の「音響彫刻」を制作しましたが、そこでお世話になった人の名前を付けたからだそうです。
奏でる人によって無限の音色を発するといわれている「音響彫刻」は、まさに人間のような奥深さや可能性を秘めています。
とにかく岡本太郎美術館の中に佇む「音響彫刻」を体感してもらいたいです。半世紀前に日本で実現した革新的な息づかいを五感で感じてもらいたいです。
公式サイトでは全体像や中止になったイベントについても紹介されています。
開催中の展覧会詳細(川崎市岡本太郎美術館) ※クリックすると公式ページに飛びます。
<川崎市岡本太郎美術館>
住所:川崎市多摩区枡形7-1-5 生田緑地内
電話:044-900-9898
観覧料:一般 900円、高・大学生・65歳以上 700円(※中学生以下は無料)
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日
アクセス:小田急線「向ヶ丘遊園」(南口)から徒歩約17分ほか(詳細は下記より)
https://www.taromuseum.jp/access.html
マップ:
6月までのすべてのコンサート、シンポジウムは中止だが……
今回の展示にあたって、コンサートやワークショップ、シンポジウムなど、たくさんのイベントが準備されていました。
企画を担当したのは「バシェ協会」の方々。『ハート・トゥ・アート』のイベントで大変お世話になっている波紋音奏者の永田砂知子さんは「バシェ協会」会長でもあり、今回も準備がかなり大変だったことでしょう。
3年前に行われた「音響彫刻修復」クラウドファンディングで300万円以上も支援を獲得した頃から多少は状況は存じ上げておりますが、とにかく多方面への根回し&調整で気苦労も絶えなかったようです。なによりも永田さんは演奏家ですから、事務的なことに忙殺されるのは本意ではないでしょうし。
そして、今回は……
新型コロナ騒動が。。。
まずは、永田さんに「お疲れ様!」を言いたいです。
・ ・ ・
コンサートなどは中止になってしまったわけですが、中止を受けて撮られた動画が公開になっています。
これは無観客で撮られているためか、かなり臨場感があります。演奏家の技術に呼応する楽器のポテンシャルをぜひ見て欲しいです。
展示に行く前に見ておくと、印象が変わると思います。
映像と実物を脳内でシンクロさせると、会場で面白い鑑賞ができるはずです。
色と音と造形とイメージを共振させることによって、バシェが目論んだ表現の革新の糸口が見つかるかもしれません。
展覧会PR映像 演奏・永田砂知子
◯バシェ音響彫刻「川上フォーン」 演奏・永田砂知子
◯「バシェ音響彫刻 武満徹:四季」
「四季」は非常に意義深いものです。永田さんからイベントのご案内をいただいた際、丁寧な紹介をされていましたので、転載させていただきます。
「四季」は武満徹がバシェ音響彫刻のために作曲した曲ですが、万博終了後、バシェ音響彫刻が解体され40年間倉庫に眠っていたため、バシェ音響彫刻を使った「四季」の演奏の機会はとても少なく、今回で3度目になります。(一般の打楽器を用いたものはCDとしては数種類リリースされているようです)
初演された山口恭範さんは、武満の世界を直伝で表現できる数少ない演奏家の方で、たびたび「四季」を演奏されていますので、今回出演していただけて好運でした。
バシェ音響彫刻の特殊性と、山口恭範さんの年齢を考えましてもこの映像はかなり貴重な映像になったのではないか、と思います。
こうして記録になり海外の方にもご覧いただくことができ、後世にも残せたことは良かったことと思っています。
武満徹さんの娘さん、武満真樹さんにも動画をご覧いただき感想もいただくことができました。真樹さんは子供時代にパリでツトム・ヤマシタさん、谷川俊太郎一家と一緒にバシェと会っているそうです。
お時間ありますときに武満徹「四季」の演奏をご覧いただきたいと思います。18分ほどあります。後半山口さんの逆立ちも見ものです。(永田砂知子)
下記はバシェ協会HPのリンクです。今回の設置が楽譜の指示どおりでないことなど、(本来は4隅に設置の指定があります)が解説されています。
「バシェ音響彫刻 武満徹:四季」https://baschet.jp.net/2020/05/22/youtube20200515/
◯バシェ音響彫刻「勝原フォーン」
「鉄鋼館」芸術監督・武満徹の大きな功績
バシェの「音響彫刻」を依頼したのは、大阪万博のパビリオンの一つである「鉄鋼館」の芸術監督を任された武満徹です。
カナダの万博で武満徹とフランソワ・バシェが意気投合したのがきっかけでした。
ここで基本的な話になってしまい恐縮ですが、バシェの「音響彫刻」というのは、正確にはフランソワとべルナールのバシェ兄弟によるものです。
バシェ兄弟にとってターニングポイントとなったのは、MoMAで行われた『Structures for Sound – Musical Instruments by Francois & Bernard Baschet』(1965年10月5日〜1966年1月23日)という展示でした。まさにサウンドアート展示のエポックメーキングだったといえるでしょう。
武満が手がける「鉄鋼館」は他の視覚中心になりがちな展示とは完全に一線を画するものだったようです。
展示の様子を探してみると、先ほど紹介した「音響彫刻修復」クラウドファンディングに当時の貴重な写真が多数掲載されていました。
何枚か転載しておきます。クリックすると、「東京藝術大学バシェ音響彫刻修復プロジェクトチーム」によるクラファンページに飛びます。当時の雰囲気を感じてみてください。
「未知の音を奏でるバシェの音響彫刻。 40年の時を超え、復元へ。」
↑クリックすると、クラファンページに飛びます。
「大阪万博1970鉄鋼館」
↑クリックすると、クラファンページに飛びます。
「大阪万博1970鉄鋼館ホワイエでのバシェ音響彫刻」
↑クリックすると、クラファンページに飛びます。
・ ・ ・
大阪万博終了後、バシェの「音響彫刻」は解体されて鉄鋼館の倉庫で長い眠りにつくこととなります。
これは非常に
ラッキーでした。
大阪万博のパビリオンは、原則として閉幕後に解体・撤去されることとなっていました。しかし、鉄鋼館に限っては、当初から多目的ホールのような公共施設として寄贈されることが決まっていたようです(現在は「EXPO’70パビリオン」として存続中)。まさに奇跡的な巡り合わせでバシェの「音響彫刻」は生き延びることとなります。
奇跡的といえば、「太陽の塔」も存続も同様です。こちらは岡本太郎の存続の強い訴えや撤去反対運動によって生き永らえました。
そんなバシェの「音響彫刻」が岡本太郎美術館に展示されるだけでも、運命を感じてしまいます。
<太陽の塔と鉄鋼館についての詳細>
鉄鋼館(万博記念公園)
https://www.expo70-park.jp/cause/expo/steel/
太陽の塔
https://taiyounotou-expo70.jp/
さて、バシェの「音響彫刻」については、非常に奥が深いので、話が尽きません。
興味を持たれた方は、ぜひ展示に足を運んでいただきたいですし、それが難しい方は「バシェ協会」のサイト(下記)から魅力を探ってみてください。
「Baschet Association of Japan – バシェ協会」
では、最後に「図録・CD販売」の情報を。
企画展「音と造形のレゾナンス」図録・CD販売のお知らせ
『音と造形のレゾナンス-バシェ音響彫刻と岡本太郎の共振』の企画展関連商品がメールにて注文可能です。
図録「音と造形のレゾナンス -バシェ音響彫刻と岡本太郎の共振」 B5版カラー56ページ/価格:700円(税込)
CD 「le hamon」永田砂知子-バシェ音響彫刻の音色を高音質で楽しめる ¥2,500(税込)
注文はこちら(公式サイト注文案内ページ)をご覧になってください。
では!
↓[ Googleセレクト 関連コンテンツ ]↓
今回の記事は以上となります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
━━━━━━━━━━━━
【発行責任】
『ハート・トゥ・アート』(渡辺)
http://www.heart-to-art.net/
◆ツイッター: https://twitter.com/heart__to__art
◆facebookページ: https://www.facebook.com/HEARTtoART
★記事に関するお問い合わせ・ご意見は下記からどうぞ★
http://www.heart-to-art.net/heart_to_art_contact.html
★ボランティアサポーター募集中です★
『ハート・トゥ・アート』の活動に興味を持ってくださった方のご連絡をお待ちしております。住んでる場所は杉並に限らず、国内外は問いません。もちろん年齢、性別なども特別な規定ありません。好奇心がい方、大歓迎です。関わってくださった人にとってプラスになるような形を考えながら関係を深めていきたいです。イベント制作の相談、企画、協力なども可能な範囲で行っております。また、『ハート・トゥ・アート』活動のサポーターも随時募集中。面白い人たちと面白いことをやりたい人は渡辺までご連絡ください。
http://www.heart-to-art.net/heart_to_art_contact.html
★facebookページ チェックしてください★
facebookページでは、タイムラインに流れてきたお世話になった作家さん情報&ハート・トゥ・アート開催情報をシェアしたりしています。
━━━━━━━━━━━━
【お仕事に絡んだご相談など】
『ハート・トゥ・アート』代表の渡辺は編集者です。紙媒体を中心に約30年の経験を積み重ねてきています。出版社、広告代理店、企業団体、WEBコンテンツ会社等からの依頼で、企画立案から取材・撮影・執筆といった一連の編集制作業務を行います。
アート、エンタメ、伝統文化、人物、施設、福祉&地域関連などの取材経験が豊富です。何かありましたらお気軽に相談ください(下記まで)。
『ハート・トゥ・アート』(渡辺)
メール:hiroshi-w@pop02.odn.ne.jp