南青山「GALLERY STORKS(ギャラリー・ストークス)」にてグループ展「CONTEXT」が開催中です。会期は2023年11月01日(水)~11月11日(土)です。ベテラン作家と中堅作家6名による展示です。
目次
CONTEXTとは、「背景・文脈・状況・前後関係」などの意味を持つ
グループ展「CONTEXT」はベテラン作家と中堅作家がぞれぞれ3名による展示です。少しながらメンバーをマイナーチェンジしながら回を重ね、今回で6回目となります。
まずは気になるCONTEXTの意味から確認します。
CONTEXTとは、「背景・文脈・状況・前後関係」などの意味を持っています。
なるほど。
続いてホームページから展示案内を転載します。
描くことは表象的な表現だが、様々な背景があり、グループ展はそんな複数の背景の関係性も見えてくる場である。
前後関係であったり、現在の状況であったり、言葉だけでなく作品同士でも語らえるところがあるのではないだろうか。
それぞれの作品の、あるいは展覧会のコンテクストをみて感じていただけたらと思う。
・ ・ ・
参加されている作家さんの背景や状況を感じつつ、今回のメンバーに至った背景などを考えるも面白いかもしれません。
参加されているのは、つぎの6名の作家さんです。
小原義也
五島三子男
山口俊朗
熊谷美奈子
相馬博
松林彩子
ギャラリー・ストークスさんのX(旧ツイッター)では展示の様子が投稿されています。調和のとれた、素敵な空間になっているようです。
本日より、11/11(土)まで(11/7火曜日 休廊)今回で6回目となります「CONTEXT」を開催いたします。
現在活躍中のベテラン作家さんと、若手作家さんの6人展です。
調和のとれた、素敵な空間になりました。是非お立ち寄りくださいませ。
小原義也
五島三子男
山口俊朗
熊谷美奈子
相馬博
松林彩子 pic.twitter.com/K233Mbug5D— ギャラリー・ストークス (@GalleryStorks) November 1, 2023
こちらは熊谷美奈子さんのX(旧ツイッター)投稿です。
コンテクスト2023
ギャラリーストークス(青山)
本日スタートです。
11/7(火)はお休みなのでご注意ください。確実に在廊できそうなのは11/4(土)夕方〜と11/11(土)15時以降の予定です。#ギャラリーストークス #gallerystorks #context2023 #熊谷美奈子 #kumagaiminako #minakokumagai pic.twitter.com/1uae2MeS7O
— KUMAGAI Minako (@kuma_39poo) November 1, 2023
グループ展「CONTEXT」詳細
グループ展「CONTEXT」
会期:2023年11月01日(水)~11月11日(土)
時間:12:00〜19:00(最終日17:00まで)
休み:火曜
facebookイベントページ:https://www.facebook.com/events/371472621902227
会場:ギャラリーストークス
住所:東京都港区南青山6-2-10 TIビル4F
アクセス:東京メトロ・表参道B1より徒歩約10分
公式サイト:https://www.gallery-storks.com/
X(ツイッター):https://twitter.com/GalleryStorks
マップ:
↑クリックして別画面で開くと拡大されます。
グループ展「CONTEXT」展示の様子
展示にお邪魔したので、その様子をご紹介します。作家さんそれぞれの感想を簡単に書き留めておきます。分量に差があるのはお許しください。一気に書き切れないので、何回に分けて追記します。※掲載画像は別画面で開くと拡大されます。
◯自然の素晴らしさを再認識させてくれる五島三子男さんの作品
エントランス部分はベテラン勢の作品でのお出迎え。一際目をひいたのは五島三子男さんの流木オブジェ。とくにシーグラス(波にもまれた独特の風合いの曇りガラス)や陶磁器片が埋め込まれている作品がロマンチックでした。
五島さんの作品を見ていると、自然物に目を向けたくなります。
こちらは五島さんの平面作品です。全部で3点。
植物を版としたコラグラフです。葉っぱや蔓などを使って版画作品するコラージュ的な技法です。作品を見ていると、「なぜ葉っぱはこんな形をしているんだろう?」なんてことまで考えてしまいます。
使われている葉っぱは広葉樹が中心ですが、アクセントで入れていると思われる針葉樹が効果的です(針葉樹に見えたけれど、実際に針葉樹なのかは不明)。
個人的には五島さんの色の感覚が大好きです。
シアンや黒をわずかに加えたような緑を帯びた深みのある黃色(承和色的?)、紅色がかった濃い茶褐色などに惹かれてしまいます。厳かで気品すら感じます。理屈抜きでカッコいいです。
日本は豊かな自然に恵まれていたことで植物に由来した色名が多いとされています。ちなみに承和色(そがいろ/じょうわいろ)は菊の花のような少しくすんだ黄色のことです。野菊のような小さな菊を愛した平安時代の第54代天皇「仁明(にんみょう)天皇」の在位した年号「承和」からとられています。
よく見ると軽く握った手のような丘?の上には、一本の木が立っているように見えます。黃色の作品も放射状の線に中心部にある赤が効いています。五島さんの手が加えられることによって、ささやかな自然物のコラージュが大自然のワンシーンを切り取ったようなスケール感に変化するから不思議です。
◯若々しい? 瑞々しい? 小原義也さんの「輪シリーズ」
小原義也さんの作品は、80代という年齢をまったく感じさせません。とにかく若々しい。いや、若々しいというよりも瑞々しい。水分量が高い柔らかい生命感に満ちています。
混沌とした「漆桶(しっつう)」の中から新しい生命が細胞分裂しながら増殖しているように見えますが、それは非常に宇宙的でもあります。白の濃淡からは細胞が成長していくような時間の経過が感じられます。そして鮮烈な情熱的な赤。これは小原さんの気持ちの投影のように感じます。
「漆桶」というのは漆を入れる桶を示す言葉です。「漆黒」と呼べるほどの輝きはなく、もっと混沌とした暗澹とした闇的な黒といったイメージで使いました。
展示は相馬博さんと対を成すように配置されていましたが、これはナイスでした。お二人の世界の相乗効果で展示空間が広がりのあるものになっていました。
あー、ちゃんと正面から左右対称で撮っておけばよかったです。
「CONTEXT」に寄せた感想を書くとすれば、小原さんの作家として背景と相馬さんの背景は似ている部分があるのではないでしょうか。自分自身の理想を追い求め続けるハングリーさのようなものが伝わってきます。
ちなみに小原さんは今回がラストの参加だそうです。こういう展示を見ると、別の機会で相馬さんとの二人展を見たくなってしまいます。
ひとつだけ気になったことがあります。それはタイトル。「輪シリーズ」とはどういう想いでつけられているのでしょう。回転するエネルギー感のようなニュアンスなのでしょうか。お会いした時に忘れてなければ聞いてみます。
◯えっ? 歩みを止めずに挑戦し続ける相馬博さんの新作
2023年は吉祥寺美術館の展示に始まり、かなり密度の濃い展示をこなしてきた相馬さん。かなりの数の作品を制作してきていますので、その中から展示作品をピックアップしてくると思っていました。
しかし、見事に裏切られました。いい意味で裏切られました。
展示8点中、7点は際立ったラインが入ったような新作。横やナナメに広がる大胆なスリットは、いままで描いてきた宇宙の先にある新しい広がりを予感させるものです。
遠目で見ると大胆さが勝った印象ですが、近くで見ると持ち味の緻密さはそのまま。さらにいままでよりも有機的な雰囲気を漂わせています。
話を聞いてみると、今回も展示で発表していない部分で挑戦している部分も多々あったようです。
これで相馬さんの今年の展示は打ち止め。
(↑これは間違いでした。12月1日より10日まで新宿御苑「つぎのカーブ」ヒョイット展に出されるそうです。お詫びして訂正します。詳細:https://blog.goo.ne.jp/next-curve/e/1c659fb74e44ce6d7e48f20473f17303?fbclid=IwAR0rQ_6PWaY_k1h9UxQ8o2lEDnOlh6BRadaQf-XDwbYRr_rLFhQtF0x6cfw)
2023年は密度の濃い一年だったわけですが、いったいどのくらいの数を制作したのでしょう。気になります。
今回の作品は個人的には新しい表現への過程と受け止めています。そういった部分では貴重なターニングポイント前夜の作品といったところでしょうか。
2024年2月5日からは「ギャラリー58」(←クリックするとギャラリーの公式サイトへ飛びます)での個展が控えています。おのずと期待感が膨らみます。
◯時間の堆積を人為的に生み出し、平面を四次元化する山口俊朗さん
山口俊朗さんの作品シリーズのタイトルは「断面」。
制作の過程は描くというよりも、何かを抽出させるようなスタイルです。
遠目で見ると、抽出といってもピンとこないはずです。
では、作品のアップをご覧になってください。
画像だと素材感が伝わりませんが、実物を間近で見ると、長方形のようなものがセロハンテープのようなものであることがわかります。
とはいえ、やはり、抽出のイメージは湧いてこないでしょう。
描くのではなく抽出するというのは、制作の過程を知ることで納得できるはずです。その過程は、つぎのような流れとなります。
まず最初にベースに「白い和紙」を貼り付けます。そして、ゼロをイメージする下地の上に塩ビシート(塩ビテープ?)を貼り付け、水性塗料を塗り、拭き取り、さらに塩ビシートを貼り、そして塗料を塗って……といった行為を繰り返します。
この行為を繰り返すことで、塩ビシートの重なりの段差などに残った塗料が何らかの線や面として浮かび上がってきます。
最終的に抽出されるのは……まるで「人為的に生み出された作品の年輪」といった印象です。
・ ・ ・
ストークスのオーナーさんから山口さんは以前、立体作家として木材などを使った作品を手掛けていたことを教えてもらいました。そして2007年、発表を続けていく中、突如、塩ビシートが作品の一部に出現し、そこから現在のスタイルへと移行したそうです。
ちなみに2007年の作品というのは、こちらです。
長い板?の上部に白っぽい塩ビシートらしきものを貼り付けた板が接着されています。
山口さんご本人とは話をしていませんので、推測の域でしかありませんが、山口さんは木材を使うことで、「縦・横・高さに加え、時間(年輪や木目)との組み合わせを意識することで四次元世界を作品で表現されようとしていた」のかもしれません。しかし、2007年の時点で木材(年輪や木目)という自然の造形に頼るのではなく、新しい素材を使って人為的に時間の堆積を生み出し、平面を四次元化していこうと思ったのかもしれません。
基本は人為的な操作の繰り返しはありますが、可能な限り偶然性を演出するために人為性を消していくような行為を施すことによって抽出される時間は、「作品の年輪」であると共に、「自然と人間の複雑な歴史」を表現しているようにさえ見えてきます。
実際、作品に「できるだけ近づいて細部を見たときの時間の堆積」と「遠くに離れたときに見えた時間の景色」は印象がかなり異なりました。
つづく
・ ・ ・
すっかり時間が空いてしまいました。なんとか必死にこいて追記。
◯手漉き和紙で独自の質感を追求する熊谷美奈子さん(追記:2023/11/24)
熊谷美奈子さんの作品はどこかで見たような……と感じたのですがど、現場ではピンと来ませんでした。
帰ってから作家さんの公式サイトを確認して、「ああ、あの作家さんか」と納得。私が記憶していた熊谷美奈子さんの作品は硬質で、まるで金属のような風合いの作品でした。ですので、だいぶ印象が異なっていました。
自分で漉いた和紙を使い、アクリルや水彩色鉛筆、柿渋、樹脂系塗料、胡粉などによる立体作品には無機物的な雰囲気はほとんどなく、有機物といった印象でした。
金属と紙を融合させたようにも見えるのですが、ワタシ的には紙や土といった有機的な部分が色濃く出ている印象を受けました。
まさに「ハリボテ」といった印象の作品。この造形に託されている意味はあるのでしょうか。きっとあるのでしょう。気になります。
熊谷美奈子さんの作品については、紙という自由自在に形状加工できる素材特性を有効活用した先鋭的立体絵画の作家さんというイメージが強かったのですが、なにか意識の変化があったのでしょうか。
公式サイト(https://kumagai-minako-art.work/)を見ると、2021年あたりから今回の流れになってきているようです。いつかどこかで直接お会いする機会があれば、その辺のことを聞いてみたいと思います。11月28日まで清澄白河「メルトメリ」にて個展をされているので行ければいいのですが……。
個展案内の画像を貼っておきます。
◯音楽シリーズと名付けられた松林彩子さんの作品たち(追記:2023/11/24)
松林彩子さんの作品は、まずは見てもらった方がいいでしょう。
深い息づかいが感じられる激しい非定形とマチエールのヒダからオイルパステルの原色が浮き上がっています。
これらの作品は「音楽シリーズ」と名付けられていました。
なぜ? なぜ音楽なのでしょう。特定の曲がベースとなっているのでしょうか。はたまた……。非常に気になりました。
個人的には音楽というよりも、風景(対象物)の中から「音」が伝わってくるような気配が感じられました。
命あるものには、必ず「音」があるという考え方があります。『古今和歌集』では「花に鳴く鶯 水にすむ蛙の声を聞けば 生きとし生けるもの いづれか歌を詠まざりける」という和歌が出てきます。動きと「音」はセットです。そして動きのない風景も生命の集合体と考えれば、さまざまな「音」が存在することになります。考えてみれば、画像から「音」を想像することができます。風のそよぎなのか、車の騒音なのか、人の笑い声なのか、同じ画像を見ても「音」の感じ方は人それぞれです。人によっては、「音」が「音楽」に聞こえる場合もあるでしょう。
こんなことを考えていると、松林彩子さんが付けた「音楽シリーズ」というタイトルも自分なりに腑に落ちてきます。
11月27日(月)~ 12月2日(土)までの期間、GALERIE SOL(東京都中央区銀座1-5-2 西勢ビル6F)にて「それぞれの視点 松林彩子・松林幸子 二人展」があります。こんな風に気になっているときに新しい展示を見たり、作家さんと話すと閃いたりするのですが、はたして、行けるのか。。。
展示案内の画像を貼っておきます。
展示タイトル「CONTEXT」を付けたのは山口健児さん
さて、最後にオマケ。
「CONTEXT(背景・文脈・状況・前後関係という意味)」という展示タイトルを付けたのは、スタート時のメンバーだった山口健児さんだそうです。
冒頭にも紹介しましたが、あらためて展示案内を最後に。
描くことは表象的な表現だが、様々な背景があり、グループ展はそんな複数の背景の関係性も見えてくる場である。
前後関係であったり、現在の状況であったり、言葉だけでなく作品同士でも語らえるところがあるのではないだろうか。
それぞれの作品の、あるいは展覧会のコンテクストをみて感じていただけたらと思う。
今回の記事が次回以降の「CONTEXT」を見る人にとっての一助となれば幸いです。
では!
以上
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今回の記事は以上となります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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