渋谷アップリンク『さよならはブルースで』公演は大盛況で終了しました
2016年8月5日(金)、渋谷アップリンクで行われたPainter kuro プロデュース第5回渋谷アップリンク定期公演『さよならはブルースで』。おかげさまで事前に予約チケットも完売となり、大盛況で終了いたしました。出演者等の公演詳細はページ後半をご覧になってください。<告知> 次回、Painter kuroによる第6回渋谷アップリンク定期公演は、2017年1月15日(日)開催。内容は『神の領域』(仮題)〜原作 大谷純「摂食障害病棟」(作品社)を予定しております。
● 公演をご覧になった方の感想 〜 ヤリタ ミサコ(詩人・翻訳家)
『さよならはブルースで』を見て劇場を出たら、ブルックリンの片隅がそのまま渋谷の雑踏につながっているような気になりました。
「かえる、帰る、還る、買える、変える、替える、孵る・・・」と、「かえる」という音が、耳の底に響き続けています。
「かえる」って、いったい本当はどういうことなんだろうか?
現実には消えてしまっている場所へ帰ること? いえ、心の故郷へ帰ること?
自分のアイデンティティの根源へ帰ること? そこへたどり着けば、自分の人生を変えられるのか? 幸福は買えるのか? 自分の希望はそこで孵るのか?
など、堂々巡りの「かえる」が浮かんでは消えて行くような、後味が残りました。
帰る、帰れない、帰らない、帰りたい・・・という矛盾。
シモーネさんの天国からの呼び声のような歌と、森田さんの、うわっつらの人生を切り裂くような強い声が、この劇の二面性を表していると思います。
ウディ・アレンの映画も連想しました。
自由とは何か?というテーマも隠されていると思います。
言葉を話せないギターと新聞売りは、それがハンディなのではなく、逆に言語の意味から開放されているゆえに、自由な人生です。
50セントとエベッツスタジアムに思い出を持つ男女二人は、長いことその思いに囚われてきたから、自由ではなかったようです。
短い時間の劇ですが、セリフだけに頼らない仕掛けがあちこちにあるので、重層的な構造だと思います。
お前の心が欲するもの、それは何だ?と観客にも問いかけられているようです。
● 公演をご覧になった方の感想 〜 生野毅(詩人・文芸評論家)
愛と涙に彩られた…と思いきや、本当は「不条理ドラマ」なのではないか、とすら思えました。真夏の上演なのに、陰影に満ちさまざまな人いきれが感じられる舞台には、確かに冷たい風が吹きすさんでいました。ラストにあるのは、本当は人生そのものの、存在そのものの「荒廃感覚」なのかもしれませんが、橘川さんの透明な音楽とピアノ、フルートの見事な演奏、女性の独唱が、閉ざされた世界に微光をもたらす役目を果たしているように思われました。主演の池田諭さんは、私が大好きな俳優であるランス・ヘンリクセンにちょっと似た風貌で、印象的でした。
● 「さよならはブルースで」記録写真
わずかですが、公演の様子を写真でご紹介します。ハート・トゥ・アートfaecbookページでは芝居の流れに沿った形で他の写真もアップしています 。合わせてご覧になってください。
「さよならはブルースで」エンディング曲&映像
公演のエンディングに流されたエンドロールとその間に生演奏された橘川琢によるメインテーマです。最後の野球のシーンは、1955年に宿敵ヤンキースを破ってワールドチャンピオンに輝いたブルックリン・ドジャースのメンバーたちが歓喜している勝利の瞬間です。
作曲:橘川琢
演奏:河内春香(ピアノ) 天野樹(フルート) シモーネ(ソプラノ)
VIDEO
↓ 以下は公演前の特設サイトとなります。
2016年8月5日(金)、渋谷アップリンク 「さよならはブルースで」公演 特設サイト
昨年はカフカ『城』公演(2015年8月9日)、泉鏡花2015「sHuNtyu」公演(2015年12月18日)で大好評を得たPainter kuro による美術家ならではの「不条理の世界」。今回はいままでのスタイルとはガラリと異なり、感動や笑いありの王道エンターテインメントとなります。もちろん役者オンリーではなく異ジャンルのアーティストたちを絡ませた絶妙なキャスティング、公演のために作られた曲の生演奏を交えて繰り広げられる世界はそのままです。
今回の原作として選ばれたのは、ヘルマン・ヘッセの『クヌルプ』。「自分の生き方はこれで良かったのだろうか?」「人間の幸せとは?」 初恋が叶わなかったクヌルプの漂泊人生を抒情的に描き、人間の幸福を問う傑作として知られている作品です。
2016年8月5日、渋谷アップリンク……ヘッセの根源的なメッセージをベースに、kuro流のエンタメ世界が動き出します。タイトルは「さよならはブルースで」 。舞台は1995年、ブルックリン。放浪の末に飛び出した町に40年ぶりに戻ってきたクヌルプはエリザベートと出会い、何を取り戻すのか? どうぞハンカチをご用意しておいでください。
宣伝映像
VIDEO
事前情報や公演の様子などは、『ハート・トゥ・アート』facebookページのアルバム や特設ブログ にて随時アップしていきます。合わせてご覧になってください。また、下画像(イントロダクション・キャスト・チケットなど)をクリックしていただくと、その部分へ飛びます。
イントロダクション
さまざまな舞台で活躍する実力派俳優の池田諭 (クヌルプ役)、テレビや舞台をはじめ幅広いジャンルに挑戦している澁澤真美 (エリザベート役)の二人の役者が主軸となり物語は進行していきます。
この二人に言霊表現者として活動中のシンガーソングライター森田智子 (路上の新聞売り役)、ミスiD2016ファイナリストにも選出された人気急上昇中のシンガーソングライター工藤ちゃん (路上ミュージシャンの少女役)が加わって世界観を広げていきます。
音楽は「新感覚抒情派」と評され現代クラシック音楽・現代邦楽作品を手がける橘川琢 が演出の空気感を取り入れながら作曲。本番では河内春香 (ピアノ)、天野樹 (フルート)、シモーネ (ソプラノ)の3人が物語をこれでもかと盛り上げてくれることでしょう。
さらに多岐に及ぶ活動フィールドで独自の理論に基づく作品を精力的に制作・発表し続けている万城目純 が総演出として脚本・演出・美術を手がけるPainter kuroをサポートする形で参加します。
「さよならはブルースで」
●日時:
2016年8月5日(金)
1部 開演18:50(開場18:30)
2部 開演20:10(開場19:55)
※1部、2部とも同じ内容となります。
●料金:
前売り2,300円、当日2,800円(共に別途1ドリンク代500円)/予約は下記参照
●会場(受付):
渋谷アップリンク (東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1階)
※MAPをクリックすると拡大します。
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キャスト & スタッフ
■さよならはブルースで
<キャスト>
池田諭(クヌルプ)
澁澤真美(エリザベート)
森田智子(路上の新聞売り)
工藤ちゃん(路上ミュージシャンの少女)
シモーネ(劇中歌/ソプラノ)
演奏 河内春香(Piano)/天野樹(Flute/Piccolo)
総演出 万城目純
脚本・演出・美術 Painter kuro
音楽 橘川琢
音響 新直人
照明 伊藤将士
主催 渋谷アップリンク
制作協力 ハート・トゥ・アート
写真は稽古の様子。
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プロフィール
池田 諭(いけだ さとし)
埼玉県さいたま市出身。大学卒業後、Tアカデミー養成所、テアトロ等を経てプロダクション座員として活動するかたわらフリーとして俳優活動を行う。1996年〜2006年迄演劇ユニットを主催。ユニット解散後は舞台だけではなく、MC、TV『相棒IV』『半澤直樹 第2話』映画『ワイルドスピード2006 inTokyo』への出演等、経験を存分に発揮しながら活動の場を広げている。ブログ http://ameblo.jp/sikeda01/
澁澤真美(しぶさわ まみ)
『嬢王』『温泉仲居・小泉あつ子の事件帳』『明日の光をつかめ』『匿名探偵』等のTVドラマへの出演、『秘密の花園』『元禄ヨシワラ心中』『大奥春秋』『今宵一杯のカクテルを』『たからモノ。』といった舞台出演等、幅広く活動している。特技は日本舞踊(正藤流 名取)。ブログ http://ameblo.jp/ragge2011/
森田智子(もりた ともこ)
佐賀県唐津市出身、言霊表現者・シンガーソングライター。 大自然に育った環境を生かし、『八百万の神』をモチーフに創作を始める。 滝や海に向かって鍛えた歌声と生命力に溢れたパフォーマンスで独創的なステージを展開。即興ヴォイスパフォーマーとしても様々なアーティストと共演を重ねる他、2008年より、誕生月である5月に、「和」×「音・言・体」をテーマに実験的なワンマンステージを実施。2013年度からは東京労音R'sアートコートにて開催。 演劇、音楽、踊などあらゆる要素を盛り込み、広い空間をダイナミックに使ったステージは、毎年、好評を得ている。1st album「ことだま」絶賛発売中。
HP「倭美×Blues」 http://tomoko.utun.net/ 。
工藤ちゃん(くどうちゃん)
2007年-2013年、バンド活動でキーボード担当。2013年に自ら開催していたイベントでのブッキング枠を埋めるためにアコギ弾き語りの活動を開始。2015年には自主音源「あの子になりたい」(CD-R)をライブ会場・通販・配信限定でリリース。ミスiD2016ファイナリストに選出。現在はバンド「工藤ちゃんのピンクローターズ」を始動させ、1stミニアルバム「私からさようなら」をリリース。平均月25本のライブをこなし精力的に活動中。Twitter メインアカウント @traum_katze 情報アカウント @kudo_chan_bot HP http://kudochan.tumblr.com/
シモーネ
ソプラノ。 ひとりでも、ふたり(Bel Cantante !)でも、どこででも、歌います。 「音語り」と名付けた歌物語もいたします。 音楽の枠を越え、アートやパフォーマンスとの面白いコラボができたらと、思案中。
河内春香(かわち はるか)
ピアノ演奏。東京音楽大学大学院後期博士課程(音楽学)在学中。これまでにピアノを山本百合子、野上登志子、水本雄三、草川宣雄の各氏に師事。現在、日本人作曲家に関する研究およびアンサンブルを中心とした演奏活動を行っている。
天野 樹(あまの たつき)
フルート演奏。国立音楽大学在学中。フルートを斎藤和志、W・オッフェルマンズに師事。クラシックのみならず現代作曲家の新作初演等を、多く手がける。フルートクァルテット『varenie』で岐阜国際音楽祭コンクール アンサンブル部門3位入賞。
橘川 琢(きつかわ みがく)
作曲を三木稔、助川敏弥の各氏ほかに師事。第2回牧野由多可賞作曲コンクールファイナリスト。文部科学省音楽療法専門士。2005年度(第60回記念)文化庁芸術祭参加。2006年・2008年度文化庁「本物の舞台芸術体験事業」に自作を含む《羽衣》(Aura-J)が、採択される。「新感覚抒情派(『音楽現代』誌)」と評される現代クラシック音楽・現代邦楽作品を作曲。詩唱・花道・ガラス造形・舞踊・舞踏・映像芸術・舞台を含めた美の可能性と音楽の界面の多様性を追究。作品は New Yorkほか海外で演奏されている。日本音楽舞踊会議理事。季刊「音楽の世界」編集長。Twitter https://twitter.com/migakky1999
万城目 純(まきめ じゅん)
確固とした自身の価値観を軸に据え、アートワークやシアターワークで多種多様な表現を探求している。活動フィールドは非常に幅広く、既成概念に囚われることなく映像・美術・演出・身体表現と多岐に及び、独自の理論に基づく作品を精力的に制作・発表し続けている。
Jun Makime/Majome (japan) ; Contemporary Dance, Butoh, Performance, (technologies): Film(Video) Maker:(Dance) Installation.. He worked for the theme; “Body and Society” for years. He learned theater, dance, ballet, yoga, and many types of expression in fields. Now, he releases his work, which is on “Body” as dancer/performer/choreographer/film artist director/Producer.) 2003 MONACO dance forum (MONACO) [video dance] 2009 Exhibition, Studying Contemporary Art (Lyon Castro): Installation, 2010 Choreographic Installation, “Ukiyo Moveable World” Lilian Baylis Studio, Sadlers Wells, London, 26th Nov 2010 (This research project is funded by Japan Foundation, PMI2 Connect/British Council Grant and RDF Grant by Brunel University)
Painter kuro
美術家、脚本、舞台美術家。自身の脚本で渋谷UPLINK舞台定期公演プロデュース(2014年~次回8/5 さよならはブルースで5回目の公演)。ライブペイントは、桜井芳樹さん(LONESOME STRINGS)や、坂本弘道さん、メルテンさん(fox capture plan、JABBERLOOP)などと。時代劇監督井上泰治監督の舞台「元禄ヨシワラ心中」ロビー展示、井上監督次回作、映画「すもも」宣伝美術。舞台美術はニールサイモン「映画に出たい!」(2014年サンモールスタジオ)など。個展は横浜art Truth、銀座K'sギャラリー、などで。未来抽象芸術展、パリビジュアルポエジー展参加。ビート文学のイベントを詩人のヤリタミサコさんと定期共催(カフェラバンデリア)。Twitter https://twitter.com/painter_kuro
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チケット
前売 2,300円 / 当日 2,800円 (共に別途1ドリンク代500円 )
★全席自由席
★当日は混雑が予想されます。開演15分前までにご来場ください。
<申し込み・予約先>
チケットの申し込み、予約は下記のでお願いいたします。
★渋谷アップリンクより予約
リンク先 よりご購入ください。
★facebookイベントページより予約
「参加予定」をクリックしていただければ、こちらから時間などをお問い合わせいたします。
★出演者&関係者より予約
直接、出演者&関係者にご連絡していただいてもかまいません。
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ヘルマン・ヘッセ
ヘルマン・ヘッセ (Hermann Hesse、1877年7月2日 - 1962年8月9日)は、ドイツの作家。主に詩と小説によって知られる20世紀前半のドイツ文学を代表する文学者である。14歳のときにマウルブロン神学校に入学するが、半年で脱走。ヘッセは両親のすすめで悪魔払いを受けるが効果がなく、その後自殺を図ったため神経科病院に入院。退院後にギムナジウムに入学するも、そこも退学。つづいて本屋の見習い店員となるが、3日でまたもや脱走。当時の経験は、1905年に発表された『車輪の下』原体験となっているといわれている。
第一次大戦の影響などもあり、1919年の『デミアン』執筆前後からヘッセの作風は一変。その後は深い精神世界を描いた作品が数多く発表されることとなる。平和主義を唱えていたヘッセは、ヒトラー政権が誕生すると「時代に好ましくない」レッテルを貼られて、ドイツ国内で紙の割り当てを禁止された。そのためドイツを離れ、スイスで執筆活動をはじめることとなる。その後、1946年にヘッセはノーベル文学賞とゲーテ賞を受賞。また、翌年には生まれ故郷のカルフ市の名誉市民となる。
今回の原作となった『クヌルプ』は1915年に単行本として発表されたもの。ヘッセがそれまで雑誌に発表した三つの物語をまとめたものである。クヌルプは一か所に定住できない漂泊の人であり、実務的な仕事をこなすことができない有能には程遠い存在だった。しかし自由奔放な言動をする彼は、まわりの人々にとっても癒しの存在でもあった。……やがて無軌道な生活を送るクヌルプは胸を病む。そして若い頃を懐かしみ、神と語り合う…。
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メッセージ(text by ハート・トゥ・アート 渡辺)
kuroさんの芝居は5作目となります。
処女作から執拗なまでに「不条理劇」にこだわってきたkuroさんが、今回、非常にわかりやすい芝居をすることになりました。
これは決して一般への迎合ではありません。
「僕はこういう芝居だってできるんだよ」という意思表示であり、「kuro = 不条理劇」という凝り固まったイメージを壊す行為ともいえるでしょう。
もしかすると常に安住のポジションに浸ってはいられないという美術家らしいスピリットが無意識に働き、そういった方向に進ませたのかもしれません。
また、初回からkuroさんの芝居に関わってきている万城目純さんを総演出に据えつつ、kuroさん自身が実質的な演出を担うという形も新鮮なスタイルです。
「演出家は2人もいらないでしょ?」という声もあるでしょうが、万城目さんの豊富な経験から導き出される意見は、kuroさんの演出に厚みを持たせることとなります。
これは「自分の作品は、自分が納得のいく形で提示したい」というkuroさん自身の強い意志の現れであり、かつ客観的な意見にも耳を傾けようとする謙虚さの結果だと感じてます。
美術家が芝居を手がけることで芝居の世界の流儀とのズレが出てきてしまうこともあります。そこから生じた軋轢や人間関係のすれ違いなど、kuroさんが積み重ねてきたものは、外から見るほど華やかなものではなかったと思います。
しかし、今回はそういったものを吹っ切った形での公演になります。
まだまだ5回目。されど、5回目。
今回の「さよならはブルースで」は、kuroさんにとってもターニングポイントになるような気がしてなりません。
最後にご来場にあたってご注意事項をご連絡させていただきます。今回の芝居はアップリンクの2階で行われます。可能な範囲でお早目の受付をしていただくと入場がスムーズとなります。何卒よろしくお願いいたします。
皆さまのご来場を心よりお待ちしております。
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